COVID-19
2020年のCOVID-19流行拡大により各国で『非常事態宣言』や『緊急事態宣言』が発令されました。
それまで耳慣れない言葉でしたが、2020年~2021年の僅か2年間で複数回、延べ100日を超える期間、緊急事態宣言下での社会生活を強いられた国民も多く居ました。
常ではない事態
平常や常態を否定する事態が非常事態だとすれば、私たちの生活のすぐ傍に非常事態が潜んでいると考える事ができます。
例えば、朝起きて食事をし、家を出て会社に着き、8時間働いて家に帰るという1日の活動の中で『家から出られない』『通勤電車が動かない』という事態が起これば平常ではありません。
車両トラブルで1路線が運休という状況でも路線を管理する鉄道会社にとっては非常な状況であり、通勤通学で定刻どおり移動したい人にとっても非常な状況です。
常と非常の境
電車が運休すれば明らかに平常ではありませんが、5分遅れで運行している場合、今の日本では『平常ダイヤ』から外れているという事になり、遅延証明書を発行してもらえます。
わずか5分の遅れは平常ではない、非常という事になります。
電車の場合、定刻輸送が普遍化していますが、バスは信号や工事などで延着しますが、例えば京阪バスでは5分以上の延着があれば延着証明書を発行してくれます。
飛行機は30分以上で遅延証明書が発行されます。
交通機関だけ見ても、常と非常の境は異なります。
重大な被害
『災害級』の『非常事態』と捉えられるには『被害』の有無が関係してきます。
未開通区間の線路で列車が立ち往生しても社会への影響は軽微でしょうが『大動脈』と呼ばれるような路線では数時間の運休でも大きな影響を及ぼします。
その路線でも運休や遅延にならないようなトラブルはニュースとして取り上げられたとしても社会への影響や被害は軽微と捉えられる傾向にあります。
多様な事態
非常事態とは平常ではなく、被害もあることが多いと考えると自然災害の多くは非常事態に陥る可能性があります。
また大事故やテロなどヒトが要因に関わるものでも非常事態は起こり得ます。
重畳によって被害が拡大するものも多くあり、例えば地震によって津波や火災、停電などが二次的に発生して事態を深刻化する事があります。
個にとっての非常事態
個人や個社にとっての非常事態も多様です。
自身が主役となって開かれるプレゼンテーションの時に下痢で顔面蒼白、声も出しづらいというのはチョットした非常事態です。もちろん、その場で漏らしてしまえば個人的大事件に発展してしまいます。
最近のニュースに身代金要求型のサイバー攻撃で大ダメージを受けたという個社の話題が見られています。社会全体から見れば個社の損害なので誰もが手助けできるような内容ではないのですが、当事者にとっては事業継続を揺るがす事態かもしれません。
【参考】厚生労働省:医療機関を標的と下ランサムウェアによるサイバー攻撃について(注意喚起)(事務連絡・2021年6月28日)
【参考】ランサム攻撃でカルテ暗号化 徳島の病院、インフラ打撃(日本経済新聞・2021年11月12日)
【参考】カプコン:不正アクセスに関する調査結果のご報告(2021年4月13日)
未来に及ぶ影響
現に被害が生じていなくても非常事態は発生します。
COVID-19ではマスク枯渇により、医療提供体制が危ぶまれる事態になりました。
その前から半導体不足が世界経済に影響を及ぼしており、自動車や家電、ゲーム機、便座まで入手困難な状況になりました。
車を売るのが商売の自動車ディーラーに自動車が供給されなければ業績不振は免れません。
新築住宅が引き渡されても、便器が付いていなければ生活する事は困難です。
何かの事象が直接誰かを傷つけるものでなくても、間接的要因により非常事態を招く恐れがあります。
脅威の同定
BCPのコンサルティングをする上で最初に行うのが脅威の同定・定義です。
何を脅威とするのかによって、発生する非常事態も異なります。
地震そのものを脅威とする場合もあれば、地震による資材の供給停止を脅威とする場合もあります。
おわりに
今回は『非常事態』について取り上げました。
常で無い状態が非常ではありますが、被害が無ければ非常事態には至らないという考え方がありました。
直接の被害がなくても、間接的な影響により非常事態に陥る例もありました。こちらは近年、顕在化する例が増えているように感じます。
災害対応においては『脅威』を同定する事が非常事態への対応には必要になります。
脅威については、また別な機会に触れたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。