『死』は誰にとっても不可避な人生のイベントです。
社会にとっても『死』には特別な意味があります。
国民には生存権が認められると同時に、教育・労働・納税の三大義務があります。
生まれながらにして得た権利や義務は、死を以って失います。
目次
├ 死亡届
├ 死亡届の提出期限
├ 死亡届の提出方法
├ 死亡診断書/死亡検案書
├ 身元不明者の死亡届
├ 火葬許可・埋火許可の申請
├ 火葬許可申請書
├ 火葬場利用申請
├ 縁の無い場所でも火葬可能
├ 災害時の身元不明遺体は行政が対応
├ 市役所での手続き
├ 世帯主変更届
├ 死亡した際の金融機関への対応
├ 口座凍結と相続決定
├ 相続・遺産分割
├ 凍結しても多少の現金
├ 災害時の延長特例
├ 生活関連の諸手続き(閉鎖・変更)
├ 公共料金
├ 故人の携帯電話
├ サブスクリプション
├ クレジットカード・電子マネー
├ 自動車
├ 民間保険
├ 被保険者の死亡
├ 契約者の死亡
├ 災害時の保険会社対応
死亡届
亡くなった場合には必ず『死亡届』の届出が必要です。これにより戸籍に 『死亡』が記載され、住民票が消除されます。
死亡届の提出期限
死亡届は『死亡の事実を知った日から7日以内』となっています。ただし、国外で死亡したときは3か月以内です。戸籍法第86条で定められています。
手続きをする人は第一に同居の親族、第二位はその他の同居者、第三位は家主や地主など管理人となっています。その他、同居していない親族や後見人も手続きをすることができます。
死亡届の提出方法
死亡届は市役所などに備え置きされています。ネットでダウンロードできる自治体もあります。
記入すべき項目は以下のようなものです。
- 氏名
- 性別
- 生年月日
- 死亡日時
- 死亡した場所(所在地)
- 住所(住民登録)・世帯主氏名
- 本籍・筆頭者氏名
- 死亡者の夫または妻(いるorいない)
- 死亡したときの世帯のおもな仕事
- 死亡した人の職業・産業(国勢調査の年)
- 届出人(続柄、住所、本籍、署名)
死亡診断書/死亡検案書
死亡届には死亡診断書を添える事になっています。
死亡診断書には死亡者名や生年月日、死亡日時、死亡場所、死亡原因などが記入され、診断した医師の署名で終わります。
平時、病院等でお亡くなりなれば死亡診断書が発行されますが、突然死や事故死などでは警察による検案が行われるため死亡検案書が発行されます。
市役所への死亡届のための1通は必須ですが、その他の手続きでも死亡診断書/死体検案書が必要になる場合があります。
【参考】厚生労働省:令和3年度版死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル
身元不明者の死亡届
死亡者が誰であるかわからない場合には、警察が対応します。
警察で検視調書を作り、死亡届に添付して事務処理が進みます。
災害時には身元不明のご遺体が多くなる可能性があり、一旦は警察で事務処理が進められます。
火葬許可・埋火許可の申請
火葬許可申請書
ご遺体は多くの場合火葬されますが、土葬の場合であっても許可が必要になります。
一般的には死亡届を出したときに、同時に火葬許可も申請してしまいます。
火葬場利用申請
火葬場を利用するための申請と『火葬許可』は異なります。火葬許可は、ご遺体を火葬しても良いか市役所に許可を貰うための申請であり、許可された事を証明する書類です。これが無ければ火葬することができません。
火葬場の利用申請は、火葬場と言う事業所との契約ですので、許可とは異なります。
火葬したあとに貰う『火葬証明書』は、ご遺体を火葬した事を証明するもので、火葬場という事業所が発行します。
火葬許可証に、火葬済の押印などで火葬証明とする場合もありますので、詳しくは火葬場(斎場)に確認します。
縁の無い場所でも火葬可能
旅先で不幸にもお亡くなりになってしまった場合、ご遺体を自宅まで運んでも良いのですが、旅先で火葬して遺骨だけ持ち帰る事もできます。
神戸市の場合ですと成人1体につき市民であれば12,000円、その他の者は36,000円と3倍の差があります。
大阪市の場合は市民10,000円、その他の者は60,000円と6倍の差をつけています
いずれの場合でも、市民以外の火葬を引き受けてくれる事になっています。
災害時の身元不明遺体は行政が対応
災害時の身元不明のご遺体は行政がマニュアルに従って手続きし、一定期間後には火葬されます。
死亡届には期限がありますが火葬には期限がないため、災害の混乱や火葬場の殺到状況などから、いつ火葬されるかは明示されていません。
【参考】東京都:災害時における遺体の取扱いに関する共通指針(検視・検案等活動マニュアル)
【参考】大阪市:大規模な災害が発生した場合の情報提供について
市役所での手続き
世帯主変更届
死亡届は『死亡の事実を知った日から7日以内』と戸籍法で決まっていましたが、世帯主変更届は14日以内が期限です。
世帯主変更届(住民異動届)を市役所等へ届け出ます。
死亡届と同時でも良いのですが、誰が世帯主になるのかわからない事もありますので、半月の内にもう一度市役所へ行く機会があれば、後回しでも大丈夫です。
【参考】大阪市:世帯変更届(世帯主が変わったときや、世帯を分けたとき)
死亡した際の金融機関への対応
口座凍結と相続決定
口座名義人が死亡したらすぐに金融機関へ連絡して口座を凍結します。口座凍結により入出金が停止します。
この手続きは、相続と関係することになります。
そもそも相続をするつもりが無いにも関わらずにお金を引き出すと相続の意思表示をしたことになってしまいます。
相続・遺産分割
法に基づく相続手続きを進めます。
その結果が出た後で、銀行へ行って手続きをすることで預金の凍結は解除されます。
相続の方法によって必要書類が異なります。
凍結しても多少の現金
遺産分割前であっても相続預金の一部払い戻しが可能な制度があります。家庭裁判所の決定を要しない方法もあります。
【参考】全国銀行協会:預金相続の手続に必要な書類
【参考】ゆうちょ銀行:相続手続きの流れ
【参考】三井住友銀行:相続の手続方法(お亡くなりになったご連絡、必要書類のご準備)
【参考】MUFG:口座名義人が死亡した際の銀行口座の手続きについて
災害時の延長特例
災害時は相続税関連の手続きについて特例が認められる場合があります。東日本大震災では概ね半年の延長がありましたが、小さな災害では特例が無い場合があります。
本来は災害の規模ではなく、被災者がどんな状況にあるかなので、土砂崩れで1軒だけが避難生活、元の家に価値がなくなったという事であれば被災後の基準価格設定が必要になるとは思いますが、一様には特例とならないため、個別に相談されることをお勧めします。
【参考】法務省:東日本大震災の被災者である相続人の方々へ ~特例法により延長された相続放棄等の熟慮期間は,平成23年11月30日までです。~
【参考】国税庁:東日本大震災により被害を受けられた方へ(相続・贈与税関係)
生活関連の諸手続き(閉鎖・変更)
公共料金
電気、水道、ガス、電話、ネット、テレビなど口座引き落としやクレジットカード決済しているものは、相続の手続き中は支払いが停止しますし、カードは解約後に使用できなくなります。
電話料金などは支払いが無ければ簡単に止められますので、早めの名義変更が必要になります。
主な連絡先は以下の通りです。
- 電力会社
- 市水道局
- 都市ガス/プロパンガス
- 通信会社(固定電話・家のネット回線・ケーブルTV)
- 通信会社(携帯)
故人の携帯電話
故人の携帯電話については残すのか解約するのか、家族や勤め先などと早めに話し合った方が良いと思います。
生前は頻繁に電話やネットを使い月額5千円程のドコモの契約を持っていた故人も、亡くなったあとは着信のみですので格安ケータイに乗り換えても良いと思います。
例えば関西電力系のmineoであれば、どこのキャリアの電波で契約しても月額1,298円です。とりあえず半年くらい様子を見ようという事でも6か月で7,788円です。
※.ここをクリックしてmineoを開くと特典(事務手数料無償化)が付きます
サブスクリプション
最近の契約形態として多いのがサブスクリプションです。
できれば携帯電話の解約は、サブスクのチェックを終えてからの方が良いかもしれません。
- 動画視聴(Amazon Prime、Huluなど)
- 音楽配信(Apple Music、Spotifyなど)
- マンガ、書籍
- 飲食(Uber Eatsなど)
- ウォーターサーバー
- シェアオフィス、自習室、宿泊施設
- 年間パス(遊園地、水族館、映画館など)
クレジットカード・電子マネー
いずれも故人名義では使えないので解約することになります。
公共料金などの支払いに充てているクレジットカードなどは早めにチェックして、新しいカードや口座に振り替えなければなりません。
最近は明細書は郵送で無くウェブですので、ウェブ明細のログインパスワードがわからないと確認に手間取る事になります。
解約は比較的簡単ですが、どのような支払いに使われていたのかを確認しながら、解約を並行させると良いです。
故人がどのようなクレジットカードを持っていたのかを調べる場合、信用情報機関に依頼する方法があります。
【参考】CIC:信用情報開示でご確認いただける内容
【参考】UCカード:自分が現在UCカードを契約しているか調べることはできますか。
自動車
自動車は名義変更しなくても物理的には動きますが、何かあってからでは遅いので、しっかり手続きします。
名義変更であれば陸運局(運輸支局)へ行って手続きすることになりますが、滅多に行く場所ではないので勝手がわかりにくいと思います。
場所についても必要書類についても、事前に調べてから行った方が良いです。
自動車でもバイクでも、いずれも税金が掛かりますので、相続した人は税負担もすることになります。
【参考】JAF:クルマの持ち主が死亡した場合、どういう手続きが必要ですか?
民間保険
被保険者の死亡
被保険者が死亡した場合は、保険契約に死亡給付があれば受取人が請求することで保険金を受け取ることができます。
契約者の死亡
契約者が死亡した場合、契約名義を変更する必要があります。契約者が被保険者であれば保険契約が解約となるので、死亡給付金を請求します。
被保険者が配偶者や子息など故人とは別、故人は契約だけという場合は、契約者の名義変更を行います。
生命保険だけではなく自動車や家屋の損害賠償保険の契約者変更手続きも忘れずに行います。
【参考】日本生命:契約者が死亡したとき
【参考】日本生命:死亡給付(保険)金を請求する
災害時の保険会社対応
災害時は生命保険も損害賠償保険も多忙を極めます。
特設の窓口で対応する事も多いので、契約先の保険会社のホームページなどを見ると良いと思います。
新聞などの報道でも、窓口の案内をしてくれることがありますので、被災生活中も新聞などは目を通すようにしておくと良いです。
特例対応としては払込猶予を貰えることと、保険金支払いに関する書類の一部免除など簡易化の対応をして貰えることです。
【参考】生命保険協会:被災された皆様へ(東日本大震災)
【参考】日本損害保険協会:東日本大震災により被災された皆様へ
おわりに
今回は『死』のあとについて取り上げました。
平時であっても人の死は非日常ですが、毎年100万人以上が無くなる『多死』時代が到来したいま、多くの国民が関わりを持つようにもなります。
災害時には特に『死』が身近に感じてしまうときであり、リソース不足の中でも手続きを進めなければなりません。
災害時の特例として延期などが認められるものと、そうでないものがありますので、基本的には平時と同じ作業が発生すると思っておいて差し支えないと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。