2022年は『ウクライナ』『ゼレンスキー』というワードを聞かない日はないほど、人口4千万人ほどの国に毎日のように何かが起きていました。
日本から5千マイル、8千kmも離れた地で起きている戦禍を直接的に見たり感じたりすることはありませんでしたが、報道などから見る惨状、間接的に受けた影響などもあり、それまでの他国の内戦や紛争などとは少し違った感じがあったと思います。
マネジメント困難なリスク
よく『リスクマネジメント』という言葉が使われますが、これは危険因子を承知の上で、その因子に近づかないための対策や、危険が迫った際の対処、危険が及んでしまった後の対処などをマネジメントするものです。
溶接など火を扱う仕事では作業者のヤケド、誤操作による製品の損壊、引火による建物火災などの危険が潜んでいます。
ヤケドしないように防護具を与える、従業者を教育する、作業に集中できるよう適度に休憩を与えるなどがリスクマネジメントとして実施されます。
火の点いたバーナーを落としてしまったときには遮断装置でガスの供給を止めて消火する、そもそも近くに引火しそうなものは置かない、専用の消火器を十分に配置するなどもリスクマネジメントです。
もしヤケドや火災が生じた場合には、金員で損害をカバーするために保険に加入します。
労働災害などではリスクマネジメントができますが、戦禍はマネジメントが困難です。
侵攻されないように防衛や外交をするのは私たち市民の力が及ぶものではありません。
砲撃を受けても死傷者を出さないということも、私たち市民の力が及ぶものではありません。
砲撃によって受けたケガは国費で治療してもらえるかもしれませんが、住居再建の費用は自己負担となり、もしかすると生命保険や火災保険の対象外かもしれないので、あらゆる面でマネジメントが難しい問題です。
災禍と戦禍の違い
災禍とは、災害による被害です。
戦禍とは、戦争による被害です。
建物崩壊や大火災など発生する事象は似ているかもしれませんが、決定的に違う点があります。
それは国家がダメージを受けているかどうかです。
自然災害の場合、地震や台風などの被害が出る場所は霞が関や永田町ではなく各地方です。行政の施設も被害を受けますが、多くが民間の施設や住居です。
戦争や侵攻の場合、国の重要な機関や施設がターゲットとなりやすく、防衛や反撃をするのは政府側であり、民間ではありません。
すなわち、国家が直接的なダメージを受け、その対応も国家が執り行う必要があります。
自然災害の場合は、自衛隊を動員するか、税金を投じて再建を支援するかなどは政府に裁量があり、政府が決定しなければ地方自治体や国民が負担して対応します。
戦争の場合は、支援するかどうかという検討は無く、国を守るために自衛隊は動きますし、秩序を守るために警察が動くと思います。
災禍と戦禍、まるで違う様子になると思います。
優先順位
2023年1月から何をしようか。
そう考えた時には、自然災害と戦争に共通して重要な食糧の備蓄ではないでしょうか。
ウクライナ侵攻により燃料や食品の値上がりが相次いでいます。もしかすると、価格高騰にとどまらず供給停止ということも考えれるので『オイルショック』のようなことが起こらないように、余分な在庫を抱えながら消費する『ローリングストック』(ランニングストック)を実施してはいかがでしょうか。
当面は対岸の火事が如く、8千キロも先で起きている軍事侵攻を報道で見る程度ですので、その映像などから必要になりそうなものを探る事が必要ではないかと思います。
ウクライナは地続きでヨーロッパを含めた多くの地域とつながることができます。
それによって、発電所が全滅しても送電網があればヨーロッパから給電されます。
しかしながら日本では、島国ゆえに他国からの送電網はなく、完全なブラックアウトが生じる可能性は否定できません。
電気とガスが無くなった場合、調理をするには薪を燃やすようなことになりますが、その薪をどこで手に入れるでしょうか。
普段は使う事がないと思いますが、薪や木炭などの備蓄も重要です。
空腹を満たす、暖をとるといった最低限のところから準備すると良いと思います。
防空壕
日本ではハードルの高い設備です。
今年2022年1月~6月までの半年だけで震度1以上の地震は1,093回発生、震度5強/弱が計8回、震度6強/弱が計2回ありました。
地震大国と言っても過言ではない日本では、地下に防空壕を掘ることは容易ではありません。砲撃から身を守る以前に、地震で防空壕が崩れてしまっては意味がありません。
もう1つの懸念材料が水です。地下水が豊富な日本では、地下室に浸み出る水も課題であり、浸水やカビが生えれば避難生活どころではありません。
安全な地下防空壕を作ろうと思うと、何千万円という費用がかかりますので一般市民レベルで考えるのは難しいかもしれません。
地下が無理なら地上でということになりますが、ミサイルの威力に耐える建物はそう簡単には作れません。
攻撃対象になりづらい地域への転居
戦禍へのリスクマネジメントとして有効な手段は退避です。
ウクライナへの軍事侵攻のニュースでも、都市部のマンションが狙われたり、テレビ塔など主要施設が狙われたりしています。製鉄所など軍需に応じる民間施設も狙われています。
砲弾も安い物ではないので、相手にダメージを与える箇所を狙うのは当然だと思いますので、何の影響も無さそうな場所は狙われにくいです。
第二次世界大戦で疎開先となった山林は、今でも山林のままという場所も少なくありません。
そこで日常生活をしていくことができるのであれば、山林で生活することが戦禍から身を守る手段になると考えられます。
疎開生活シミュレーション中
筆者も疎開生活をシミュレーションしています。
場所は想定済で、現地には幾度も足を運んでいます。
雨風をしのげる建物があり、現状では電気は通っています。ガスはプロパンなので残量がある内は調理や給湯に使えます。
足腰が弱いとキツイですが、少し山を上がればキレイな水も手に入りそうな場所です。
食料が大きな課題です。
稲作は目立つので、おそらく育てても盗まれて終わりでしょう。
そうなると目の行き届く範囲で畑を耕すしかないと思います。現状では除草剤を撒いてしまっているので、農作物を育てるためには土壌改良が必要です。
軌道に乗ってしまえば自給自足ができそうな環境ですが、それまでの間をもたせるだけの備蓄が必要です。
街に出るには、車無しでは往路で3時間くらい、復路は300mくらいの標高を登る必要があり、買い物をして荷物を持って戻るので6時間くらいは見込む必要があります。
徒歩だけで9時間、物資調達のために街に出るのは現実的では無さそうなので、籠城戦を想定すべきであるとシミュレーションしています。
台湾有事
もしも台湾で戦争が起きたらどうなるでしょうか。
アジアや欧州からの航路は台湾と深く関わりを持っています。台湾から半径数百kmが危険となると、航路は絶たれたようなものです。
穀物、果物、石油、金属、繊維、あらゆる物資の流通が途絶えることで、従来の生活を続けることは困難になると考えられます。
ガソリン車は動かせない、電気自動車は太陽光発電などでどうにか動く、といったことでしょう。
衣食住のいずれも輸入に依存しています。
住居については、人口減少時代に入ったことで既存の建物でもどうにか足りるとは思います。
ただし、職業の変化が激化すると居住地域が変わりますので、住居の争奪戦が起こるかもしれません。
昔の『炭鉱のまち』『材木のまち』などで栄えた地域が、再び栄えるかもしれません。
炭鉱夫・縫子
日本では炭鉱夫や縫子を自称する人は少なくなったというか、ほとんど見かけないかもしれません。
『夫』や『子』など性別を示唆する職業名は時代に合わないということもありますが、本質的に炭鉱で働く人の減少、縫製をするために雇われている人の減少は顕著だと思います。
燃料の輸入が止まれが、誰かが日本の炭鉱で石炭を掘らないとならないかもしれません。
衣料の輸入が止まれば、誰かがミシンを使って縫製しなければならないかもしれません。
レアである職業が、今後は多くの人が従事する仕事に変わるかもしれません。
逆に、商社マンやクリエイターなどの職業が無くなるかもしれません。
ワークマンの国有化?
縫製の話題で言うと、作業着などで有名なワークマンは、モノの無い時代には重宝される会社かもしれません。
丈夫で長持ちする衣料の製造ノウハウがあるワークマンや自重堂など日本企業は、その製造ノウハウを国民向けに使うように指導されるとは思います。米国の国防生産法のような法律ができると思います。
輸入停止が恒久的なものになりそうであれば、ワークマンや自重堂は国有化され、縫製工場でつくられる作業着などは一旦は国に納入されて、国から販売または配給という可能性もあるかもしれません。
戦後のモノ不足の時代には、1本のズボンを夏は短く切って短パンに、冬は継いで長ズボンにして履いていたと聞いたことがあります。夏に履き潰して色あせたズボンに、継がれた部分は濃い色をしているというツートンカラーは普通のことだったそうです。
衣食住は国民生活に直結、燃料不足で物流も厳しくなる中では国の支援が入らないと国民にモノが届かない事態になるかもしれません。
結局は備蓄
20年先はわかりません。
有事があって5年くらいは、備蓄品で細々としのげることが、サバイバル生活を生き残る術かもしれません。
5年後には、自給自足を強化する必要がありますので、道具類の整備や技術習得がカギになると思います。
穀物を育てて収穫するだけではなく、それを加工して保存できる技術が無ければ生きられないかもしれません。
住宅の修繕も必要ですし、衣料もつぎはぎが必要です。
戦争は起こって欲しくはありませんが、外国のミサイルが日本領の真上を通過する事態ですので、誤爆も含めていつ戦禍が訪れるかわからない状況です。