和歌山市の橋崩落
2021年10月、和歌山市で水道管が通る橋が崩落しました。
6万戸が断水しましたが、近くの別の橋があり、通行止めにして仮設配管したことで比較的短期間で復旧しました。
和歌山市の水道施設は老朽化
『和歌山市』『水道』と聞くと、2020年1月に大規模な断水を実施して老朽化した水道管を入れ替える工事が予定されていました。
生命にも関わることですので、前日の夕方のニュースなどでも繰り返し備えるようにアナウンスされていました。
結果としては、本管ではなく枝管の漏水であったために大規模改修とはなりませんでしたが、老朽化が進んでいることは周知されました。
【参考】日本経済新聞:和歌山市、断水中止で混乱 水道管老朽化は他都市も(2020年1月20日)
橋のダメージは甚大化
和歌山市の橋崩落は数日で片が付きましたが、過去には1カ月以上も不便を強いられたケースがあります。
山口県の周防大島では、船が衝突して送水管が損傷、本州からの水の供給が停止し大規模な断水となりました。
【参考】日本経済新聞:断水1カ月で住民疲弊、井戸廃止が裏目 山口・周防大島(2018年11月22日)
島ならではのリスク
2022年に起きたトンガの海底噴火では、降灰などの影響によりトンガ全体で水道事情が悪化しました。
元々、配水設備が普及している地域ではないため、各戸で貯めていた水が降灰によりダメージを受けたことが水不足につながっています。
COVID-19の影響もあり復興への手助けがしづらく、島ゆえに隣国から容易に水を送る手段がない事も復興の遅れにつながるとされています。
島だから自前の水や電気が必要であることが露呈した災害でした。
Anchorage’s Polynesian community packs up thousands of pounds of donations for relatives in Tonga
配水中央化・広域化のメリットとデメリット
周防大島のケースでは本州の浄水された水が安定して島に供給されるという中央化のメリットを前提に送水管が整備されたと思いますが、バイパス路がないために主管の損傷で全島断水が長期化することになりました。
中央化が進むのは島だけではありません。内陸でも進められています。
昔は各戸に井戸があり、また川の水もキレイだったので生活用水として汲み上げて使っている家庭が多くありました。
水道事業では川などから大量の水を取水し、それを浄水し、送水管を通じて市街へと配水します。低い平地の大きな川から取水した水を山の上まで揚水するのは非効率ですので、山間部の集落には特別に簡易水道を設けるケースが多くありました。
集落に必要な分の水を取水し、小さな浄水設備で各戸へ配水する方法で、高台に配水池を設ければ落差である程度の水圧が得られます。
老朽化と給水人口減少
中央化されたことで何万人もの人が同じ経路の送水管を使う事になりますが、分岐した先に住む人口には差が生まれてきます。
10万人に影響する送水管と100人のために山道を登る送水管の工事費が同等であった場合、税負担の公平性から見てどこの工事を優先すべきかという課題が生じます。
高度経済成長期に住宅開発などで数万人単位で人口が増えて行く計算で敷設された水道が、人口減少時代になり事業性が危ぶまれ、水道料金だけでは維持できなくなれば税金が投入されますし、水道料金の値上げも行わざるを得ません。
簡易水道の必要性
昭和40年台に敷設された水道は既に50年が経過しています。今後、大きな地震で地面が陥没することも予想されますが、じわりと漏れ出すような事もあると思います。
市内全域の水道管入替には大きな費用がかかりますが、それを負担していく覚悟は必要だと思います。
COVID-19で縮小する市場があり雇用不安もありますので、そうした方々の受け皿として公共工事としての水道事業を拡大しても良いのではないかと思います。当然、市民間のコンセンサスが要りますので簡単な話ではありませんが、生活にも生命にも密接な水道ですので考える時期なのかもしれません。
中央配管が進む前は簡易水道などと呼ばれる集落限定の水道が存在していたので、これを活かす方法を考えることも必要だと思います。
テロ対策など維持にはお金がかかるので簡単ではありません。
とりあえずは送水管の断裂による断水の影響を少なくするために、どこか途中から給水できる仕組みを作れれば、給水車の配備方法などが変わると思います。
災害対策として、各コミュニティがどうありたいのかを議論する機会が必要だと思います。