2011年3月11日(金)14時46分、三陸沖を震源とする大地震が発生し、その後、太平洋沿岸部に津波が到来しました。
3月11日まで2カ月、阪神淡路大震災があった1月17日まで1週間という今日、過去の災害を振り返ってみました。
※.ページ後半には津波に関するYouTube映像がたくさんあります。津波の映像をご覧になりたくない方はご注意願います。
目次
├津波の放映はタブー?
├2012年の自粛要請が原因?
├視聴者が選択?
├インパクトが強いならば….
├映像の選択制は定着?
├YouTubeなら誰でもタダで
├YouTubeで視聴
├Keyword『津波』
├クリエイティブ・コモンズとは?
├CCマーク付きなら研修会で使える
├研修資料としての動画コンテンツ
├研修資料
├目的ごとに使い分ける
├津波とは
├逃げ遅れる
├車で津波
├財産
├地上
├宮城県気仙沼市
├岩手県野田村
├岩手県大船渡
├岩手県釜石市
├宮城県仙台市
├海上
├福島県相馬市沖
├空撮
├岩手県久慈市
├岩手県野田村
├岩手県宮古市・田老町
├岩手県山田町~岩手県大槌町
├宮城県仙台市
├地震全般
├石巻赤十字病院
├青森県八戸市の記録
├NHK
├FNN311
├発災時
├震災(津波以外)
津波の放映はタブー?
2012年の自粛要請が原因?
津波の映像をテレビ放映で見かけないような気がしますが、実際はどうでしょうか。
その背景には2012年2月末に日本医師会がNHKや民放連に申し入れたとされる津波映像の可能な限りの自粛要請があります。
医師会が申し入れるので、その根拠となるのは健康上の問題であることは明らかですが、津波映像が心的外傷を負った人の傷口に塩を塗るような事になるのは否めないと思います。
【参考】日刊スポーツ:津波映像など被災者に配慮「一層慎重に」(2012年3月1日)
【参考】livedoore NEWS:日医が津波映像「自粛」申し入れ テレビ局はどうするのか(2012年3月1日)
【参考】BPO(放送倫理・番組向上機構):2012年3月に視聴者から寄せられた意見
視聴者が選択?
見たくない人が大勢いらっしゃる事は事実ですので、実際に放映される前には数秒間、津波映像を流す旨が画面一杯に表示されて、視聴回避を促しています。
見たくない人は見ないようにしてくださいという『選択制』は合理的な方法の1つだと思います。
アメリカでは2001年9月11日、同時多発テロが発生し世界貿易センタービルに航空機が突入する映像が世界中で流れました。
自由と選択の国と言われるアメリカでも、心的外傷に配慮してこの映像の放映回数は制限されました。
放映回数が多いと、不可避になってしまう可能性があるのでやたらと流す必要はないと思います。
インパクトが強いならば….
しかしながら、全く流さないかどうかについて『伝承』という面でも課題が残りそうです。
被災した人が見たくないほどに生々しい、恐怖を与える映像であるという事は、経験したことがない人にも伝わるものがあるのだと思います。
見たくない人には見せない、見たい人には見る機会を与えるというのは必要な事ではないかと考えられます。
【参考】週刊現代:震災特番「視聴率全滅」が意味するもの ~日本人は冷たいのか? それとも、見られない理由があるのか?(2016年4月5日)
【参考】東洋経済:テレビが震災特番で伝えた3.11から10年の重み 「美談」を安易に持ち出さず、外さなかった本質(2021年3月12日)
映像の選択制は定着?
最近は家にテレビアンテナが無く、ケーブルテレビも契約せず、地上波放送をまったく見ないという世帯が増えています。
代わりにAmazon PrimeやHulu、NETFLIXといった動画配信サービスを契約しています。ほとんどがサブスクタイプなので、その期間に配信されている物は見放題ですし、個別のタイトルをレンタル視聴する事もできます。
このように、見たいコンテンツだけを選択的に調達することが比較的若い世代には定着、高年齢世代でも利用者が増えています。
YouTubeなら誰でもタダで
動画配信のプラットフォームであるYouTube(ユーチューブ)を利用すれば、誰もが映像を配信できますし、誰もが映像を無料で視聴することができます。
比較的新しいテレビにはYouTube視聴機能も備わっているので、携帯端末が無い世帯でも、インターネット回線さえあれば視聴する事ができます。
YouTubeで視聴
Keyword『津波』
YouTubeを開いて『津波』のキーワードで検索すると、非常にたくさんの映像が出てきます。
少しフィルタを掛けたいので筆者は『クリエイティブ・コモンズ』にチェックを入れて検索する事が多いです。
クリエイティブ・コモンズとは?
クリエイティブ・コモンズ(CC)とは、著作権の意思表示のような物です。
著作物には著作権があり、死後も引き続き権利が続くといった特性があり、保護するには良いのですが、コンテンツの二次活用には障壁にもなり得ます。
著作権を放棄してしまうと、好き勝手に加工されたり利用されてしまいます。
保護もしつつ、利用も促す仕組みとしてCCがあります。著作権は私にありますがどうぞご活用ください、といった表示になります。
詳細はクリエイティブ・コモンズ・ジャパンのウェブサイトで確認できます。
【参考】YouTubeヘルプ:クリエイティブ・コモンズ
【参考】creative commons JAPAN:クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは
CCマーク付きなら研修会で使える
CC(クリエイティブ・コモンズ)のマークが入った作品は、研修会での利用の自由度が高まります。
個人で視聴する上ではどんなコンテンツでも良いのですが、津波映像を伝承や教育に役立てる場合、思わぬところで著作権の壁に当たらないようにしておくと良いです。
比較的新しいテレビにはYouTube視聴機能も備わっているので、携帯端末が無い世帯でも、インターネット回線さえあれば視聴する事ができます。
研修資料としての動画コンテンツ
研修資料
机上の空論のような研修資料ばかり並べていても、受講者のやる気にはつながりにくいですし、役に立たない研修になってしまうかもしれません。
生の声が入った、編集されていない動画にはパンチ力があります。そこから何をくみ取るかは個性もありますので強要できませんが、皆で同じ動画を見て議論することに災害研修の意義はあります。
目的ごとに使い分ける
YouTubeだけでも豊富なコンテンツがありますので、研修で到達したい事項に合わせて色々と選ぶことができます。
参考テーマ1.津波とは
津波とはどのような恐ろしさがあるのかという事を知ることができます。これに関してはどのコンテンツを使ってもわかりますが、人々が絶句していく様子がわかる物が伝わりやすいです。
参考テーマ2.逃げ遅れる
いつ逃げ出すべきなのか、自分はどのくらいの早さで海抜何メートルまで逃げられるのか、タイムラインを作成する研修で役立つ映像がいくつかあります。
釜石市役所前で逃げ遅れた方々が映った映像は衝撃も大きいので見せる相手を選ぶ必要がありますが、公開を承諾したご遺族のお考えを受け止めて『早くから逃げ始める』重要性を伝えられると良いと思います。
参考テーマ3.車で津波
車という閉鎖空間は過信を生むことがよくあります。
冠水した道路で水没してしまう車が多くあるのは、その傾向の表れだと思います。筆者の育った地域は毎年洪水、15cmも水が出たら車は動かなくなると誰もが知る地域ですが、毎年車が進入しては立ち往生、油は流れますし、進入の勢いで波が立ち床下浸水の家が床上浸水になってしまうという大迷惑な車たちでした。
津波が到来することを知る由があるか否かはわかりませんが、今は携帯電話に地震を知らせる機能が備わっていますので、異常な自然現象には気づけるかもしれません。
それをどう活かすのかについて、教育する必要があると思います。
参考テーマ4.財産
災害の研修で価値観の議論をする際に重要となるのが財産や職業などです。
生命が助からなければこれらの物は活きて来ないのですが、生き延びる事ができたときに、これらが無いと苦しい思いをします。
被災された方々にお聞きすると『生きていたのだから良いではないか』といった主旨の事を言われて傷付いた、というお話をよく聞きます。また、職探しや家探しで被災地を離れる事について『逃げる』という印象があることが心苦しいという事もお聞きします。
財産を持ち出そうとして津波にのまれてしまった人も居るそうですが、目の前で財産や仕事を失うという事について、自身の身の上に起きたらどうか、親しい人に起きたらどうするか、答えはありませんが、考える事が重要です。
地上
主に地上から撮影された津波映像をまとめています。
時間が書かれている映像については、そのあたりにハイライトシーンがあります。参考までの付記です。
宮城県気仙沼市
1つ目の映像は個人の方の投稿です。投稿者のコメントも読んで頂ければと思います。動画13分48秒では『涙出て来るんですけど』と言いながらも撮影を続けておられました。
後ろから聞こえるラジオは津波の危機感が出ている感じはなく、よくある地震と同じようにガラスが割れた話などが聴こえてきます。
後半では火災が何か所も発生しているにも関わらず、消防車のサイレンも回転灯も無い様子がわかります。
撮影された気仙沼市では災害直接死が1,109名、被災住宅15,815棟と発表されています。行方不明者も200名以上居ります。
0分00秒 地震発生直後の市街、車が立ち往生、津波到来前
2分10秒 津波到来、『早く逃げて』
3分00秒 『人いる』『何してんだあの人』『腰立たないんだ』
4分45秒 撮影者『ウチも終わりだな』
5分45秒 津波でトラックも流され始める
7分00秒 濁流の様子が変わり子供達がパニック
9分00秒 木がきしむような音が聞こえてあらゆる物が流失
9分45秒 撮影者『ウチが無くなりました』
10分55秒 『海が燃えています』
13分00秒 火災の様子(河北ビルから撮影)
筆者は2012年8月にこのコヤマ菓子店様の近くのエリアを訪問しました。ちょうどBRTが開通した直後に訪問したので、真新しいバスに乗車して気仙沼市内を往来しました。
※.当方とコヤマ菓子店様は何ら関係ございません。コンテンツとして当方が利用させて頂いているだけです。
太陽の蓋
未確認の情報ではございますが、目視確認している限りでは映画『太陽の蓋』にこの画像が使われています。
たまたまAmazon Primeで無料枠で放映されていたので視聴していたら、見たことがある映像が出てきたので驚きました。
太陽の蓋では詳しく描かれていない福島第一原発(イチエフ)の様子は『Fukushima50』を見た方が良いです。
宮城県気仙沼市(その2)
津波到来前の、まだ危機感が高まっていない人が居る映像から始まり、絶望的な光景へと変わっていきます。
男性の声で防災無線から津波からの避難を呼びかける声が終始聞こえますが21分30秒あたりで一旦途切れ、また24分過ぎから繰り返されます。
19分50秒 船が勢いよく流される
20分50秒 多くの船が津波で滞留
22分40秒 石油貯蔵タンクのような物が流される
25分10秒 沿岸部で歩き回る人影
27分40秒 電柱倒壊
30分10秒 遠くで火災
31分20秒 津波と津波の間の引いている時間
33分25秒 陸でぶつかり合う船
37分55秒 上記の船が集積した場所で火災発生
38分20秒 降雪
39分35秒 降雪の中で次の津波到来
岩手県野田村
小さな津波であった第1波から、徐々に大きくなるにつれ危機感が高まる様子がわかる映像です。
会話も録音されていますので、船の持ち主の気持ちもよく伝わってきます。1隻数百万円や数千万円という財産であり、仕事の道具である船を目の前で失う瞬間の気持ちは計り知れないです。
0分45秒 第1波到来、カモメが鳴く声が聞こえる
1分15秒 ヘリコプター通過
3分00秒 巨大な津波が沖まで到来、『津波が本当に来た』『巨大だぁ』
3分35秒 『うわぁ船が無くなるよ』
4分00秒 堤防まで津波到来
4分20秒 係留中の船に津波到来
岩手県大船渡
津波の映像に多く見られるのですが、数十センチの浸水程度である最初のうちは沿岸住民でも明るく会話しているのですが、車が飲まれてしまうメートル級の海水が押し寄せてくると言葉を失っていきます。やがて家も流される勢いになると絶望感が伝わってきます。
この間、わずか10分程度です。
0分40秒 『逃げろ』の指示
2分30秒 女性の声が聞こえるが何となく明るい
3分30秒 車が浸水する事に驚く様子
4分30秒 堤防を越えてしまい驚愕
4分50秒 防災無線
6分00秒 街に津波が到来し悲鳴・絶句
7分00秒 女性たちは無言
8分00秒 ほとんどの建物が流される
9分00秒 残された建物も冠水
13分00秒 水の流れが収まる
14分00秒 潮が引き始める
14分50秒 防災無線(津波情報第5号)
岩手県釜石市
報道関係者が撮影しているので、コメントが客観的です。リアリティが垣間見える部分もありますが、市民が撮影した物とは少し毛色が違います。
1分30秒 勢いを増す津波
2分10秒 電柱倒壊
4分15秒 高台に避難する人
4分25秒 波が引いていく様子
0分15秒 『早く逃げろ!』の大声がたくさん聞こえる
0分40秒 人が海水に飲み込まれる直前
1分30秒 釜石市役所の高い位置から撮影
2分20秒 再び低い場所で海水が引いていく様子を撮影
6分35秒 第2波
8分35秒 街中で海水がうねる様子
宮城県仙台市
日常と非常が交差する映像です。
筆者は自動車運転中に震度5を経験しましたが、道路が歪んだ感覚はある物の、建物に居る時のような地震の感覚はありませんでした。
おそらくこの映像も、そのようなドライバーさんたちが津波が到来しているという意識も無く、この橋を渡っているのだと思います。
0分15秒 津波到来直前でも車が橋を走行
1分30秒 津波が到来する橋を渡る車とリポーター
海上
海上の映像は非常に少なく、自由に使えそうな映像は限定的です。海上保安庁が提供した映像を編集してYouTubeに掲載している物が散見されます。
福島県相馬市沖
空撮
岩手県久慈市
陸上自衛隊八戸駐屯地による空撮映像を、青森県八戸市が掲載しています。
久慈市は八戸市のすぐ南に位置し、車で1時間ほどの距離にあります。
記録によれば久慈市は市役所が浸水、さらに久慈川上流の久慈小学校、久慈中学校、久慈東高校の方まで浸水したそうです。
0分40秒 5m以上の津波を目視確認
2分10秒 港に津波到達
3分40秒 久慈港に到達・数隻転覆を目視確認
4分30秒 久慈川を遡上・防波堤を超えて市街地に浸水
5分25秒 第2波が1kmに接近中・第1波より高い
7分20秒 石油備蓄基地流失
岩手県野田村
地上の映像も本ページに掲載していますが、ものすごい勢いで波は陸を上がっていきます。
空撮隊が到着した頃は波が引く頃です。
1分00秒 野田村市街地
1分40秒 野田村南・波が引いていく様子(15:45)
3分45秒 田野畑村
【参考】Google Map: 岩手県野田村
【参考】Google Map: 岩手県普代村
岩手県宮古市・田老町
宮古市田老町は震災から4か月後の2011年7月に筆者が訪れた地です。
町の診療所では医師や看護師らの避難は間に合ったそうですが施設には海水が押し寄せたそうです。水が引いてからお薬などを取りに戻ったというお話を聞きました。
0分00秒 田老町
0分35秒 田老町で火災2か所、消防の姿は見えない
1分50秒 宮古市北部
4分00秒 宮古市南部 湾内浸水
4分40秒 2両編成の白い電車が流されている
岩手県山田町~岩手県大槌町
0分00秒 山田町
0分20秒 陸中山田・浸水や火災を確認、消防は確認できず
1分20秒 防波堤を超えて甚大な被害
2分35秒 船舶が多数転覆
3分20秒 大槌町
3分40秒 大槌町全域浸水、火災5カ所、消火活動なし
5分40秒 大槌町の南側
5分55秒 爆発を確認(16時21分)
【参考】Google Map: 岩手県山田町
【参考】Google Map: 岩手県大槌町
宮城県仙台市
陸上自衛隊東北方面隊撮影機からの映像。リポートしている自衛隊員も絶句するような状況がいくつかあります。
1分00秒 仙台火力発電所
2分05秒 仙台港
3分10秒 学校の屋上に避難
3分30秒 名取川を津波が遡上(閖上付近?)
4分00秒 津波から逃げるワンボックスカー
4分50秒 名取川河口付近(レポーター絶句)
5分20秒 小学校の状況(津波到来・屋上避難)
5分45秒 荒浜小学校(津波到来・屋上避難)
6分10秒 若林区深沼、沿岸部の様子
6分50秒 大きな津波が到来
宮城県仙台市
【参考】Google Map: 宮城県仙台市
【参考】tv asahi america,inc.: 津波映像に米報道機関も釘付け
地震全般
石巻赤十字病院
青森県八戸市の記録
NHK
【参考】NHK:3.11の映像
【参考】NHK:阪神淡路大震災特集サイト
【参考】NHK:取材ノート、ひろげます, 「ごめんなさい 救助のヘリじゃなくてごめんなさい」(2021年3月8日)
【参考】HUFFPOST:「なぜ自分が撮ってしまったのか」 津波を生中継した元NHKカメラマンは今も葛藤の中で生きる
FNN311
発災時
岩手(発災時)
宮城(発災時)
福島(発災時)
茨城(発災時)
千葉(発災時)
東京(発災時)
神奈川(発災時)
震災(津波以外)
岩手(震災の様子)
宮城(震災の様子)
福島(震災の様子)
茨城(震災の様子)
千葉(震災の様子)
東京(震災の様子)
天皇陛下、被災者へビデオメッセージ
おわりに
今回は東日本大震災で発生した津波のアーカイブ映像について取り上げました。
その場で発せられている言葉が日本語ですので、日本人にとって非常に役立つコンテンツだと思います。
津波の避難について、必要性は幾度も聞かされており、高いところへ逃げるべきという事は多くの人が知っているかもしれませんが、どのタイミングで逃げるべきかというのが難しい事がわかりました。
釜石市の映像(参照)では、逃げ切れなかった男女の姿が映っていましたが、ご遺族がおっしゃる『とにかく、いち早く逃げる重要性』という想いは、こうした映像から学んでいきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。